就農を目指す方に①

こんばんは。就農2年目のとらパパです。

前回の更新からだいぶ時間が経ってしまいました。今年のトマト作りは後半戦も中盤です。  

今は目の前のことを日々こなしていくのみなので詳細な振り返りはしないものの、トマト作りは難しいと思わされる年になっています。

非農家の方には、ハウス栽培だから天気は関係ないですよね?と聞かれることがあるのですが、とても大きく関係します。

長雨だった一昨年、猛暑が続いた昨年と比べて天候に恵まれ、産地としては序盤、例年以上に好スタート。誰もが良い年になると思っていたのも束の間、前半の区切りとなるお盆を待たず、7月中旬頃には既に昨年同時期比で収量は大きく下回ることに。過去2年に比べれば悪い天気ではないのに、どうしてなのか…。

もちろん、私も例外ではなく8月終わりころには過去2年から大きく収量を落とす勢いに。例年この季節になると最終的な着地点を予測するのですが、今年は恐くてそれもできない状況です。

とはいえ、うまくできなかったらすぐに生活苦になる・・・という訳ではありません。トマトの施設園芸(ハウス栽培)では複数のハウスで植える時期をずらし、リスクを分散しているためです。

全てのハウスが失敗に終わる・・・ということはまずないと思います。私は今年いろいろと試して、昨年同様にうまくいったハウス、失敗したハウスもあります。その話はシーズン終了後に。

さて、本題です。

来年4月からの農業研修生の募集締切が10月末に迫っています。

今年も私たちの住む平取町(振内町)に見学にきて頂いたり、先週も帯広からご夫婦が来春からの参入希望で体験に来られました。私が代表して言うのも何ですが、わざわざ足を運んでいただけるのは本当に有難いことです。

私は移住して4年目(研修2年、就農2年)なのでまだまだ経験不足ではあるのですが、決断を後押しできるよう私なりにできるだけ情報を出していきたいと思います。

また、現在研修中の2組のご家族からもリアルな声を聞けると思うので期待してください(iさん、pieさん、宜しく!)

今回は私が改めて考える「平取を選ぶべき理由」です。

1.トマトだけで生計が成り立つ

資料や時期によるのですが、日本の農家で兼業の割合は7-8割と言われています。

逆に言うと専業農家は全体の2~3割とかなり少なく、他の産地では冬はアルバイト、他の作物を作るため休みが少ないという話はよく聞きます。

そんな中、平取では3~11月がトマト作り、12~2月はお休みというのが一般的です。

収入を得られるのは収穫・出荷をする5月~11月の半年のみで、これで一年分の生計を立てる訳です。

それでさすがに小樽のにしん御殿のような豪華な「トマト御殿」が建てられるわけではないので、誤解しないで頂きたいのですが(しないか。。)、就農した先輩方は新築にしろ中古にしろ自宅を購入しますし、車の買い替えも普通にしています。

とはいえ、北海道で新規就農すると専業農家になれる・・・というのは決して平取町だけではありません。

2. 研修制度、就農実績の多さ

平取町の誇れる点はここにあると思います。

まず就農までのルートが明確です。1年目の農家研修、2年目の実践農場研修(町の農場を借りて自分で営農する)を経て3年目に就農します。

この平取町の研修制度は北海道の複数の産地でも参考にされていると聞いています。また、就農をサポートする組織があり、土地探しや整えるべき設備など様々な相談に乗ってくれます。

研修中に自分が思っていた方向性、内容と違うと判断して辞めた方もわずかにいらっしゃるようですが、平取町の新規就農実績は既に20年を超え、ここ10年以上毎年絶え間なく応募があります。

応募時の年齢は様々で20代後半と若い人もいますが、総じて30代後半~40歳ぐらいが多いと思います。

会社員としての経験が長く、転職では失敗はできない。でも確実に家族を養える仕事が必要と考えて平取町を選ぶ方が多いようです。その安定志向ゆえに、私たちは時々、「公務員のような農家」と表現することがあるくらいです。

農業と一口に言っても、様々な形があります。

5次・6次産業化を目指す、一攫千金を目指す、 孤高の脱サラ農業インフルエンサーを目指すという方に、平取での就農は間違いなく向いていないので注意です。

ちなみに「孤高の脱サラ農業インフルエンサー」というのは、埼玉県で有名な「手島農園 男気トマト」をやっている方でこれはこれで注目しています。あと平取でも5次・6次とはいかないまでも新たに加工・販売を目指す動きがあるのは付け加えておきます。

ここまで平取を選ぶべき理由を述べてきました。就農をお考えの方には平取をぜひ選んで欲しいと思っています。ただ、個人的には一度立ち止まって考えてほしいことがあります。

・営農(経営)の予想はできない

農家としては「安定感」のある平取での就農ですが、これは現時点までの話です。就農後の経営が安定するかの保証は誰もできません。

会社員は良くも悪くも毎月給与が支払われます。

一方、農家。この安定感は農家にはありません。先の不安定な天候の話に関係しますが、温暖化によるトマトの作りづらさは年々悪化している印象を受けます。平取町では研修中にしっかりとトマト作りの基礎を習得できるので、就農してから路頭に迷うことはありませんが、変化する環境に対応する意識と行動は常に必要です。

とはいえ、上記は農家に限った話ではないですよね。会社勤めも一生安泰ということはなく、10年後どうなっているか・・・分かりませんよね。農家よりは予想できるか。。

ただ、私を含め脱サラして農家になり、また会社勤めに戻りたい・・・と思う方はかなり稀です。全てのことを自分で決める必要がある自営業ですが、困ったら相談できる人も多い環境にいるので不安は少ないです。

・資材、経費の大幅な値上がりと農家の所得の減少

食品と同じですが、農業に関する資材と経費は年々上がっています。

農業用のハウスを建てる場合、新品の資材を使うのはあまりに高すぎるので今ではほぼ不可能になってしまっています。また中古だとしても、かつて先輩が新品で建てた時と同じくらいの金額です。

そして、中古で初期投資を抑えられたとしても、ランニングコストとしての毎年の経費は激増しています。

経費を販売価格に上乗せできればそれも問題ないのですが、大幅な価格転嫁はできておらず、結果として農家の所得は減っていく一方です。

これも今後どうなるかは予測できませんし、もしこのままでいくと平取町であってもトマトだけでは生活が難しいとか、農家になるのはおすすめできないと言わざるを得ない日が来るかもしれません。

上記はかなり悲観的な見方とはいえ、私個人としては就農を目指す方に迷っているなら勢いで決めた方が良いとはとても言えません。今後、農家になったとしても厳しい現実に直面する場面はありえると思います。そうしたことも承知で決断する必要があります。

とはいえ、繰り返しになりますが、私自身は自分の決断を後悔したことはこの4年間一度もありません。トマト作りに関して向上心を持ち続けている先輩や近隣農家のお陰です。

次回は私の住む振内(ふれない)地区について触れます。

今年の冬用に寒締めほうれん草を植えました。分かりづらいですね。

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